Text by 林 正儀
これまでのTMDとは類系がまったく違う。“突然変異のように”生まれた。というRCAケーブル、VGA(Vollkommen Grigg's & Apps)が我が家にきた。WATSONに似てるな。さらにIRON STEELやProkrisのノウハウも融合したらしいのだが……。
いやあ、すごいとか驚いたを通り越して声も出ない。これまで聴いたことがない世界があるとすればこれだ。もうオーディオの音というより、生そのままじゃないかと思えるつややかな声の表情。その色っぽさや楽器の微細なニュアンスまで生き生きと伝えたのだ。
硬いとか柔らかいじゃなく、いってみれば好きな音。VGAはクラシック好きな僕の感覚にぴったりで、我が家のプラチナム/PL300の中~高音域。リボンの音がしゃりつき明るくなり過ぎていたのが、このケーブルでピタっと落ち着いてくれた。うそだろう。その効果は絶妙で、スピーカーが生まれ変わったようにみずみずしい音場バランスが得られる。
「モーツアルト/レクイエム」の潤うような弦パートなど、ふわっとした倍音の美しさに包まれた。「我が家をムジークフェラインに」の夢がかなった瞬間だ。静寂の世界がただただすばらしい。
弱音がデリケートになれば、大音量や低域の再現力も際立ってくる。オーディオの真理だが、これはベートーベンやブラームスの重厚なオーケストラサウンドやオペラ、バレー音楽がそうだし、ショパンのピアノ曲がさらに気高く芸術的に鑑賞できるということ。パルス成分の多い現代音楽でもいやな音がしない。少しもうるさくなく、悠々とDレンジ感豊かに楽しめた。
あなたがクラシック好きなら、スピーカーをとりかえる前に絶対VGAを試すべきだ。
会って直接くどきたいくらいだが、
実はこのRCAケーブル。かなりバーサタイルで、ジャズもボーカルもロックも。昭和の歌謡曲だっていけるから大したものだ、万能であってなおかつ良さがでてくる。
マイルスの「ライブ・イヴル」は突出する熱量と鮮度バリバリだ。
同じく復刻SACDの「岩崎宏美」は歌唱力抜群。僕ら世代にはディスコ歌謡はゴキゲンで、パンチ力のあるのびやかな表現力が群を抜き、アナログの重量感も伝えてくれた。
くり返すがVGAは世界が違う。我が家のCDとプリ間は、もうVGAで固定だな。これまでのTMDも悪くはなかったが、VGAは別次元で、畑野さんが精魂込めた最終ケーブルに相応しい。